
準・メルクル指揮、深作健太演出による二期会公演「ローエングリン」を見る(奥田)

近年のオペラ演出は、時として原作を改作するほど大胆な演出が多いが、その中でも今回の演出は際立ったものであった。私は恐れを知らない大胆さの点で、ワーグナーのひ孫であるカタリーナの「マイスタージンガー」を思い出した。双方ともいわば二世として(深作も高名な映画監督を父に持つ)冒涜とも取られかねない実験が許容されやすかったのかも知れない。
ところで、何と舞台で展開されるのは、ローエングリン自身ではなく、その伝説の騎士(特に第一幕への前奏曲)に魅了されたルートヴィヒ2世の物語だという設定である。ルートヴィヒ2世のワーグナーとローエングリンに対する崇拝ぶりは有名であるが、作品をめぐるそのような後日譚を作品の中に取り込んでしまった訳である。この設定には、神話や伝説をいかに受容すべきかという問題を、作品のテーマとして大きくクローズアップしたいという意図があるのだろうし、その他にもさまざまな工夫や仕掛けがあって、いろいろと挑発的に考えさせられる点は確かに評価できるが、それらの設定や仕掛けがいわば頭でっかちで未消化に終わり、作品全体として訴える力を発揮するには至っていないと感じた。
